Sarashina2.2-OCRデモアプリケーション展示報告(JSAI2026)

こんにちは、SB Intuitions株式会社の髙田拓実です。

2026年6月8日(月)〜12日(金)の期間に群馬県高崎市のGメッセ群馬で開催された第40回人工知能学会全国大会(JSAI2026)にて、SB Intuitionsはプラチナスポンサーとしてブース出展を行いました。

ブースでは弊社が開発を進めるSarashinaシリーズのモデルを用いたデモアプリケーションを展示しました。 本記事では、展示したデモのうちの一つ「Sarashina2.2-OCRデモ」をご紹介します。

デモの様子

JSAIでは以下のデモを展示しました。

デモアプリ解説

デモアプリは「画像入力 → ドキュメント領域検出 → OCR実行」の3ステップで構成されています。

OCRデモの画面遷移の流れ

① 画像入力:カメラ入力・ストレージからのアップロードなどで入力画像を用意します。デモを円滑に進めるために、サンプル画像をギャラリー表示してすぐに試せるようにしています。

② ドキュメント領域検出jscanifyで写真内の書類の輪郭を自動検出・補正してからOCRモデルに渡します。こうすることで、OCR処理を施す前に余分な背景などのノイズを落とすことができ、安定して正確な読み取りができるようになります。

③ OCR実行:クロップされた入力画像をOCRモデルに入力し、リアルタイムで読み取り結果をストリーム出力します。出力はMarkdown形式でブラウザ上にリアルタイム表示され、数式・表も人が読みやすい形できれいにレンダリングされます。

図などの文字化できない視覚要素は無視するのではなく、バウンディングボックス(座標情報)として抽出する仕様にしています。検出された座標情報から該当領域をクロップして画像として埋め込むことで、図・イラストの情報も落とさず、文書全体をMarkdownに再構成します。

文書画像中の図も見逃さずMarkdown中に組み込みます

使用したOCRモデルの紹介

デモに使用したOCRモデルはSarashina2.2-OCRです。2025年3月に公開したSarashina2.2-Vision-3BをベースにOCRタスク向けに特化させたVLMで、日本語・英語の文書解析に特化した30億パラメータのエンドツーエンドOCRモデルです。画像エンコーダにSigLIP2、言語モデルにSarashina2.2-3B-Instructを組み合わせた構成になっています。

一般的なOCRが「文字を読み取るだけ」なのに対し、このモデルは文書全体の構造を理解してMarkdown形式に再構成してくれるのが大きな特徴です。具体的には以下のコンポーネントに対応しています。

  • 縦書きテキスト:日本語文書で多い縦書きもしっかり認識
  • :HTML形式で構造を保ったまま出力
  • 数式:LaTeX形式に変換
  • 図・イラスト:テキスト化できない視覚要素は、0〜1000の正規化座標でバウンディングボックスを出力

学習パイプライン

OCRモデルの学習パイプライン

モデルは以下の3段階で学習されています:

  1. 事前学習:プロジェクターのウォームアップ・ビジョンエンコーダの強化・フルパラメータ事前学習・高解像度継続学習(最大約250万ピクセル対応)の4サブステージで構成
  2. Supervised Fine-tuning (SFT):日英の多様な文書データ(合成データ+オープンデータ)でファインチューニング
  3. Preference OptimizationMPO(Mixed Preference Optimization)を手動アノテーションデータで適用し、複雑なレイアウトでも正しい読み順で出力できるよう改善

ベンチマーク結果

VJRODa(日本語文書OCRベンチマーク)では、比較モデルを大きく上回る結果を出しています:

Model CER(低いほど良い) BLEU(高いほど良い)
Sarashina2.2-OCR 22.6 79.9
dots.ocr 40.1 71.5
Qwen3.5-4B 86.1 47.8

olmOCR-bench(総合的な文書解析ベンチマーク)でも、特に数式(arXiv Math)・表(Table Tests)のカテゴリで高いスコアを記録しています:

Model arXiv Math Headers Footers Long Tiny Text Multi Column Old Scans Old Scans Math Table Tests Overall
LightOnOCR-2-1B 0.890 0.204 0.889 0.848 0.418 0.865 0.887 0.773
dots.ocr 0.674 0.849 0.921 0.803 0.411 0.603 0.823 0.722
Sarashina2.2-OCR 0.778 0.291 0.846 0.752 0.323 0.528 0.829 0.683

モデルはMITライセンスで公開されており、商用利用も可能です。

まとめ

今回はJSAI2026のブース展示で公開した「Sarashina2.2-OCRデモ」をご紹介しました。

縦書き・数式・表など、既存のOCRツールが苦手としてきた要素もMarkdownとして正確に再構成できる点が、Sarashina2.2-OCRの大きな強みです。モデルはHuggingFaceで公開していますので、ぜひ試してみてください!